ちぇきん箱

八月の終戦記念日にあわせて放送されたドラマ「犬の消えた日」。

二時間あまりを号泣しながら観る。

日本軍の残酷な仕業に、戦争への疑問に

そして犠牲になった犬たちに涙が流れた。

ドラマを観終わり、ふと思い浮かんだのは、ある犬の顔。

うめちゃん・・と私が勝手に名付けて呼んでいる谷中で知った犬。

魚肉ソーセージをあげるとガブガブとあっという間に平らげてしまう。

いつも犬小屋の前にじっと座っていて

人の姿を見つけると吠えもせずにしっぽをフリフリ、

番犬にはなれないうめちゃん。

とても人懐っこい犬なのに、何故か目が寂しそうで

私はその目が忘れられずに何度か様子を見に谷中へ行った。

久しぶりにうめちゃんに会いに行こうと思い立ち、うめちゃんちへ。

そっとうめちゃんの庭を覗くと、犬小屋はあるのに本人がいない。

こころなしか、犬小屋がきれいに掃除されているように見えた。

「え、うめちゃん・・・」

そういえば、たしかにもうだいぶお年だったような。

まさか、うめちゃん。え?ほんとに?うめちゃん。

うろたえる私の耳に「ガサッ」という小さな音が聞こえた。

振り返ると、そこにはしっぽをフリフリしながら

じっと私を見つめるうめちゃんが!

良かった、うめちゃん、元気だったのね。

あれ?なんだか前に来た時よりも若返ってない?

でも確かに歯は以前と変わりなくガタガタで

間違いなく彼はうめちゃんだった。

元気で良かった、会えて良かった。

しばらくうめちゃんタイムを楽しむ。

まるで私にも「会いたかったよー」って言ってくれてるように

アピアピのうめちゃん。

嬉しくて楽しいひとときを過ごす。

しばらく遊び

まだ居たかったけれど飼い主さんに悪いので今日はこのへんで。

また来るねーと、名残惜しいお別れをする。

ただひとつ、

飼い主さんにどうかうめちゃんが幸せに過ごせるようにとお願いしたくなったのは

柱とうめちゃんを繋いでいるのがワイヤーだったから。

うめちゃん。

ちょっと切ない気持ちが残る。

やっぱり近いうちにきっとまた来ようと決めた。